労働保険料の計算と徴収方法について、ひとつずつ丁寧に説明します
まず、「労働保険料」とは、雇用保険料と労災保険料の総称です。
この2つの保険料をまとめて支払います。
今回は、労働保険料の計算方法と徴収方法について見ていきましょう。
労災保険料・雇用保険料の算出方法
労災保険料・雇用保険料は、それぞれ以下のように算出します。
労災保険料 = 労災保険対象従業員の年間賃金総額 × 労災保険料率
雇用保険料 = 雇用保険対象従業員の年間賃金総額 × 雇用保険料率
なお、労災保険料は、パート・アルバイトを含む従業員を1人でも雇っていれば納付しなくてはいけません。
一方、雇用保険料は、以下の条件を満たす従業員が対象になります。
・31日以上の雇用見込みがあること
・1週間当たりの所定労働時間が20時間以上であること
1週間あたりの労働時間が20時間なので、週休2日だとすると、1日4時間以上働いているアルバイトやパート従業員も、31日以上の雇用継続見込みであれば対象になります。
(出典:「平成22年4月1日から雇用保険制度が変わりました」)
労働保険料の保険料を算出してみましょう
では、実際に労働保険料の保険料を算出してみましょう。
1年間に従業員に支払う賃金が300万円(従業員1名、毎月20万円×12ヶ月+賞与60万円(夏・冬それぞれ30万円))の小売業を営んでいるとします。
労災保険率と雇用保険率は、業種によって異なりますので、ここでは厚生労働省の「労災保険率表」と「労働保険料の申告・納付」を参照し次のように計算します。
小売業の労災保険率:3.5/1000
小売業の雇用保険率:9/1000
労働保険料 = 賃金総額 ×(労災保険率+雇用保険率)
3,000千円×(3.5+9)/1000=37,500円
この例でも分かるように、賃金は基本給だけでなくボーナスも含みます。また、通勤手当や扶養手当、時間外手当といった様々な手当がある場合も加算します。
※労働保険料は、年度によって改定される可能性があるので、必ず最新のデータを確認してくださいね。
雇用保険の被保険者負担額の算出方法について
労働保険料のうち、労災保険の保険料については事業者が全額負担しなくてはなりません。
一方、雇用保険の保険料については、雇用者と従業員の双方で負担します。
雇用保険の被保険者負担額は、被保険者(従業員)に支払われた賃金額に被保険者負担率をかけたものです。
今回の例の場合、小売業なので被保険者負担分は3/1,000になります。
被保険者負担分を計算するときは、月額の負担分(12回分)と、夏・冬のボーナスを別々に考えると分かりやすいでしょう。
・給与の負担分(月額):給与200,000円 × 被保険者負担分3/1,000 = 600円
・給与の負担分(年額):月額負担分600円 × 12カ月分 = 7,200円
・ボーナス負担分(夏):ボーナス300,000円 × 被保険者負担分3/1,000 = 900円
・ボーナス負担分(冬):ボーナス300,000円 × 被保険者負担分 3/1,000 = 900円
・被保険者負担分総額:給与の負担分(年額)7200円 + ボーナス負担分(夏)900円 + ボーナス負担分(冬)900円 = 9,000円
一方、この場合の労働保険料の事業主負担分は、38,750円 - 9,000円 = 29,750円 と算出できます。
アスベスト被害者救済のための一般拠出金もあります
また、労働保険料には上記のほかに、一般拠出金というものもあります。
これは、石綿(アスベスト)による健康被害が社会問題化したため、平成19年4月1日から設けられた制度です。
被害者やその遺族の救済のために、すべての事業者が平等に拠出します。
拠出金は、1年間に支払った賃金総額に一般拠出金率(1000分の0.02)を乗じて算出します。
労働保険料の年度更新手続きとは何か?整理しましょう
このように、労働保険の保険料の計算には、以下の4つの情報が必要となるわけです。
・労災保険対象従業員の年間賃金総額
・労災保険料率
・雇用保険対象従業員の年間賃金総額
・雇用保険料率
また、労働保険の保険料は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間を基準とします。
毎月ごとに支払うのではなく、年度始めにまずは概算で保険料を納付し、年度末に賃金総額が確定したら、過不足分を精算するという方式です
。これを「労働保険料の年度更新手続き」といいます。
労働保険料の年度更新手続きは毎年、6月1日から7月10日の間に行うと決められています。
申告期間前になると、所轄の労働局から労働保険番号、事業の所在地・名称、保険料率等が印字された「労働保険概算・確定保険料/石綿健康被害救済法一般拠出金申告書」(申告書)があらかじめ送付されます。
確定保険料算定基礎賃金集計表を作成しましょう
労働保険料の納付額を確定するには、前年度の賃金総額を確定する必要があります。その際に必要となるのが、「確定保険料算定基礎賃金集計表」です。
まず、アルバイトやパートも含むすべての従業員の賃金を集計した賃金台帳を用意します。
アルバイト、パートタイムなどの労働者の場合、雇用保険の加入資格を満たしていないことがあるので、資格者かどうかを確認します。また、新入社員や退職者、出向などで従業員の増減があった場合の見落としがないかもチェックします。
基本給のほか、ボーナスや各種手当てもチェック対象です。
年度更新手続きには、前年度の給与支給総額と新年度の給与支給予定額が必要です。期間中に従業員の増減があった場合には、過不足分を支払わなくてはならないので、間違いがあってはいけません。
申告時期が迫ってから慌てるのではなく、4月になり前期末をしめたら準備を始めておくほうがよいでしょう。
賃金を受け取るほうには理解できませんが、賃金の計算は非常に複雑なので、漏れがないように専用ソフトを使用するのも一つの手段です。
労働保険料の申告・納付手続きについて
所轄の労働局から申告書が送付されてきたら、内容をチェックし、概算で支払った保険料と確定させた保険料を比べ、過不足があるようなら支払います。また、新年度の給与支給予定額をもとに、概算の保険料を支払います。
申告書に保険料等を添えて、金融機関か、所轄の都道府県労働局および労働基準監督署に持参する、もしくは申告書を所轄の都道府県労働局および労働基準監督署に提出し、口座引き落としで支払うことも可能です。
最近では、インターネット上で電子申告・電子納付もできますので、公的機関や金融機関の窓口に行く手間が省けます。
小規模の事業者などは、積極的な活用を検討するといいでしょう。
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