労務・社会保険関係

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労働保険料の計算と徴収方法について、ひとつずつ丁寧に説明します

まず、「労働保険料」とは、雇用保険料と労災保険料の総称です。
この2つの保険料をまとめて支払います。

今回は、労働保険料の計算方法と徴収方法について見ていきましょう。

労災保険料・雇用保険料の算出方法

労災保険料・雇用保険料は、それぞれ以下のように算出します。

労災保険料 = 労災保険対象従業員の年間賃金総額 × 労災保険料率
雇用保険料 = 雇用保険対象従業員の年間賃金総額 × 雇用保険料率

なお、労災保険料は、パート・アルバイトを含む従業員を1人でも雇っていれば納付しなくてはいけません。
一方、雇用保険料は、以下の条件を満たす従業員が対象になります。

・31日以上の雇用見込みがあること
・1週間当たりの所定労働時間が20時間以上であること

1週間あたりの労働時間が20時間なので、週休2日だとすると、1日4時間以上働いているアルバイトやパート従業員も、31日以上の雇用継続見込みであれば対象になります。
(出典:
「平成22年4月1日から雇用保険制度が変わりました」

労働保険料の保険料を算出してみましょう

では、実際に労働保険料の保険料を算出してみましょう。

1年間に従業員に支払う賃金が300万円(従業員1名、毎月20万円×12ヶ月+賞与60万円(夏・冬それぞれ30万円))の小売業を営んでいるとします。

労災保険率と雇用保険率は、業種によって異なりますので、ここでは厚生労働省の「労災保険率表」「労働保険料の申告・納付」を参照し次のように計算します。

小売業の労災保険率:3.5/1000

小売業の雇用保険率:9/1000

労働保険料 = 賃金総額 ×(労災保険率+雇用保険率)

3,000千円×(3.5+9)/1000=37,500円

この例でも分かるように、賃金は基本給だけでなくボーナスも含みます。また、通勤手当や扶養手当、時間外手当といった様々な手当がある場合も加算します。

※労働保険料は、年度によって改定される可能性があるので、必ず最新のデータを確認してくださいね。

雇用保険の被保険者負担額の算出方法について

労働保険料のうち、労災保険の保険料については事業者が全額負担しなくてはなりません。
一方、雇用保険の保険料については、雇用者と従業員の双方で負担します。

雇用保険の被保険者負担額は、被保険者(従業員)に支払われた賃金額に被保険者負担率をかけたものです。

今回の例の場合、小売業なので被保険者負担分は3/1,000になります。

被保険者負担分を計算するときは、月額の負担分(12回分)と、夏・冬のボーナスを別々に考えると分かりやすいでしょう。

・給与の負担分(月額):給与200,000円 × 被保険者負担分3/1,000 = 600円

・給与の負担分(年額):月額負担分600円 × 12カ月分 = 7,200円

・ボーナス負担分(夏):ボーナス300,000円 × 被保険者負担分3/1,000 = 900円

・ボーナス負担分(冬):ボーナス300,000円 × 被保険者負担分 3/1,000 = 900円

・被保険者負担分総額:給与の負担分(年額)7200円 + ボーナス負担分(夏)900円 + ボーナス負担分(冬)900円 = 9,000円

一方、この場合の労働保険料の事業主負担分は、38,750円 - 9,000円 = 29,750円 と算出できます。

アスベスト被害者救済のための一般拠出金もあります

また、労働保険料には上記のほかに、一般拠出金というものもあります。
これは、石綿(アスベスト)による健康被害が社会問題化したため、平成19年4月1日から設けられた制度です。
被害者やその遺族の救済のために、すべての事業者が平等に拠出します。

拠出金は、1年間に支払った賃金総額に一般拠出金率(1000分の0.02)を乗じて算出します。

労働保険料の年度更新手続きとは何か?整理しましょう

このように、労働保険の保険料の計算には、以下の4つの情報が必要となるわけです。

・労災保険対象従業員の年間賃金総額

・労災保険料率

・雇用保険対象従業員の年間賃金総額

・雇用保険料率

また、労働保険の保険料は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間を基準とします。
毎月ごとに支払うのではなく、年度始めにまずは概算で保険料を納付し、年度末に賃金総額が確定したら、過不足分を精算するという方式です

。これを「労働保険料の年度更新手続き」といいます。

労働保険料の年度更新手続きは毎年、6月1日から7月10日の間に行うと決められています。

申告期間前になると、所轄の労働局から労働保険番号、事業の所在地・名称、保険料率等が印字された「労働保険概算・確定保険料/石綿健康被害救済法一般拠出金申告書」(申告書)があらかじめ送付されます。

確定保険料算定基礎賃金集計表を作成しましょう

労働保険料の納付額を確定するには、前年度の賃金総額を確定する必要があります。その際に必要となるのが、「確定保険料算定基礎賃金集計表」です。

まず、アルバイトやパートも含むすべての従業員の賃金を集計した賃金台帳を用意します。

アルバイト、パートタイムなどの労働者の場合、雇用保険の加入資格を満たしていないことがあるので、資格者かどうかを確認します。また、新入社員や退職者、出向などで従業員の増減があった場合の見落としがないかもチェックします。

基本給のほか、ボーナスや各種手当てもチェック対象です。

年度更新手続きには、前年度の給与支給総額と新年度の給与支給予定額が必要です。期間中に従業員の増減があった場合には、過不足分を支払わなくてはならないので、間違いがあってはいけません。

申告時期が迫ってから慌てるのではなく、4月になり前期末をしめたら準備を始めておくほうがよいでしょう。

賃金を受け取るほうには理解できませんが、賃金の計算は非常に複雑なので、漏れがないように専用ソフトを使用するのも一つの手段です。

労働保険料の申告・納付手続きについて

所轄の労働局から申告書が送付されてきたら、内容をチェックし、概算で支払った保険料と確定させた保険料を比べ、過不足があるようなら支払います。また、新年度の給与支給予定額をもとに、概算の保険料を支払います。

申告書に保険料等を添えて、金融機関か、所轄の都道府県労働局および労働基準監督署に持参する、もしくは申告書を所轄の都道府県労働局および労働基準監督署に提出し、口座引き落としで支払うことも可能です。

最近では、インターネット上で電子申告・電子納付もできますので、公的機関や金融機関の窓口に行く手間が省けます。

小規模の事業者などは、積極的な活用を検討するといいでしょう。

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【傷病手当金】病気になった時・ケガをしたときの傷病手当金給付手続きについて分かりやすく説明します。

さて、仕事中に病気や怪我をすると、思うように働けないのに、出費がかさむばかりで不安が募るという方も多いと思います。
労災ではない傷病による休職は、あくまで働く人の事情による休暇なので、「労働していない時間は給与もない」というノーワークノーペイの原則に基づき、無給となる企業も多くあります。
今回は、そのようなときの支えになる「傷病手当金の給付手続き」について、分かりやすく説明します。
傷病手当金を受け取るための条件を知ろう
会社からの給与が受け取れない場合でも、社会保険には「傷病手当金(しょうびょうてあてきん)」という制度があります。
この制度は、私傷病によって休暇を取らざるを得ない労働者やその家族の生活を守るためのものです。
傷病手当金を受け取るための条件は、以下の通りです。
1.業務外の理由での病気や怪我による休業であること
業務上・通勤災害によるものや病気と見なされないもの(美容整形など)は支給対象外となり、業務や通勤途上で受けた災害による病気や怪我は、労災の給付対象となります。
2.業務に就くことができないこと
業務に就くことができないかの判断は、被保険者の業務内容を考慮し、第三者が判断します。
3.連続する3日間を含み、4日以上仕事に就けなかったこと
私傷病で仕事を休んだ日から連続して3日間の待機期間の後、4日目以降の仕事に就けなかった日に対して支給されます。
待機期間には、有給休暇、土日・祝日等の公休日も含まれます。
4.休業期間に給与が支払われていないこと
休業している期間中に給与が支払われていた場合、傷病手当金の対象にはなりません。
ただし、給与の支払いがあっても、傷病手当金の額よりも少ない場合は、その差額が支払われます。
このほか、同一の病気で障害厚生年金を受けている場合や、出産手当金をもらった場合などは、傷病手当金の支給額が調整されます。
また、傷病手当金受給中に刑事罰を受けて刑事施設に入った場合には、支給が停止されます。
傷病手当金の給付額を計算してみましょう
傷病手当金の給付額は以下のように計算します。
<平成28年度以降の1日あたりの支給額の計算方法>
12ヶ月間の標準報酬月額の平均額 ÷ 30日 × 2/3
例えば、月給28万円の人なら、28万円÷30×2/3=約6,220円と計算します。
標準報酬月額には基本給だけではなく、通勤手当や残業手当といった各種手当ても含まれます。
ただし、一時的に支給される見舞金のようなものは含まれません。
(出典:全国健康保険協会 「傷病手当金支給日額・出産手当金支給日額早見表」)
傷病手当金の支給期間は1年6カ月です
傷病手当金の支給期間は、1年6カ月です。
この期間中に復職してまた休職した場合でも、同じ病気や怪我による休職であれば、引き続き傷病手当金の支給が認められます。
例えば、骨折で3月1日から2ヶ月休職し(待機3日間で3月4日が支給開始日)、その後復職したものの、また病状が悪化し6月1日から再び休職したような場合には、3月4日〜翌年の9月3日までが支給期間となります。
また、傷病手当金の受給期間にほかの病気や怪我で働けなくなった場合には、新たな支給期間が認められます。
こうして見ると、無限に傷病手当金を支給することができそうですが、実際には3年程度休職していると、就業規則に則って勤め先から退職を勧められるケースが多いようです。
傷病手当金の申請方法について
傷病手当金の申請方法を見ていきましょう。
1.勤め先に長期欠勤の報告をする
病気や怪我による療養期間が4日以上に渡りそうなときは、勤め先の担当者に相談し、欠勤にするか有休休暇を取得するか相談します。
欠勤扱いで無給となる場合には、傷病手当金の申請準備をします。
2.医師に「意見書」への記入を依頼
「傷病手当金支給申請書」を用意し、医師に「意見書」への記入を依頼します。
これは、休暇をとっている間、病気や怪我が原因で就労不能だったことを証明するものです。
病院によっては、書類の作成に時間がかかることもあります。
3.勤め先に「事業主記入欄」への記入を依頼
医師からの記入が終わったら、勤め先に申請書を提出し、「事業主記入欄」に記入を依頼します。
ここで、休業期間中は無給であったことを証明してもらいます。
4.勤め先から健康保険組合などに提出
医師、事業主、本人の記入欄すべてに記入したら、勤め先の担当者経由で健康保険組合や協会けんぽに提出します。
このほか、怪我による申請や、支給開始日以前の12ヶ月以内に転職している場合、障害厚生年金、老齢年金を受給している人、被保険者が亡くなった場合などは、追加書類が必要になるため担当者に確認しましょう。
退職していても傷病手当金が受け取れます
「傷病手当金」は、退職したら支払われなくなると思っている人もいるかもしれません。
しかし、以下の条件に該当していれば、退職していても傷病手当金が受け取れます。
・退職日に病気や怪我が原因で就業が不能
・退職日までの健康保険の加入期間が1年以上ある
・退職前に傷病手当金の給付を受けている
なお、傷病手当金を受け取っている場合、雇用保険の失業給付は受け取れません。
失業給付は「就職の意思はあるが失業している人」に支給するもので、傷病手当金は「病気や怪我が理由で働けない人」に支給するものなので、同時に受給するのは矛盾が生じるためです。
会社が傷病手当金を代理受給することも可能です
休職期間中の給与が無給だったとしても、厚生年金や健康保険といった社会保険料の負担額は、会社負担・本人負担ともに、就業中と変わりません。
給与から天引きできない分は、本人が支払うか、会社が立て替えます。
療養中の従業員に支払いをさせるのは不可能なことも多く、会社が立て替えるケースもあるでしょう。
ただ、復職せずに退職した場合など、立て替え分の支払いを巡ってトラブルになることもあるようです。
そのため企業側は、従業員に支払われる傷病手当金をいったん受けとり、社会保険料などを差し引いた上で、従業員に支給することも可能です。
もしものときに備えるためにも、傷病手当金について知っておきましょう
病気休職の期間中の賃金を全額支給する企業はごくわずかかもしれません。
多くの企業は、健康保険上の「傷病手当金」や各種健康保険組合における独自の傷病手当付加金を含めた企業負担に留まっていることが想定されます。
病気や怪我をしてしまうと、最悪の場合は無給になるか傷病手当金など賃金の一部のみカバーする手当金に頼らざるを得ません。
もしもの時に備えるためにも、傷病手当金に関する知識を備えておくとよいでしょう。

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【裏ワザも紹介!】育児休業中に「育児休業給付金」を受けるための手続きについて、詳しく説明しています

さて育児休業は、男女ともに与えられた労働者の権利です。
ただ、家族が増えて何かとお金が入り用になる時期、育児のために仕事を休むことで経済的に負担が大きくなる懸念があります。

そうした時に頼りになるのが、育児休業給付金です。

育児休業給付金の対象になる人とならない人がいることをまず知ってください

以下の条件に当てはまっている場合、パートや契約社員、男性でも育児休業給付金の対象となります。

◎雇用保険の被加入者
◎育休中、休業開始前の給料の8割以上の賃金を支払われていない
◎育休前の2年間で、1ヵ月に11日以上働いた月が12ヵ月以上ある
◎就業している期間が支給単位期間ごとに10日以下となっている

以下の人は育児休業給付金の対象になりませんので注意しましょう。

×自営業などで雇用保険に加入していない
×妊娠中に退職した
×育休開始時点で、育休後退職することが決まっている
×育休を取得せずに職場復帰する

(出典:ハローワークインターネットサービス『育児休業給付とは』

育児休業給付金はいつから? いくらもらえる?

育児休業給付金は一般的に、育休に入って2ヵ月目から、会社を通して申請します。
それ以降は、2ヵ月おきに申請します。
そのため、実際に支給が始まるのは3ヵ月目頃からです。

気になる金額は、育休開始日から180日目までは月額給与の67%、181日目から育休最終日までは50%が支給されます。

月給の上限は44万7,300円、下限は7万4,100円と定められています。

例えば、育児休業前の月給が30万円の場合、最初の180日間は30万円の67%に当たる20万1千円の育児休業給付金が支給されます。

育児休業給付金をもらえる期間は、産後休業終了~子どもが1歳(後に説明する「パパママ育休プラス制度」を利用した場合は1歳2ヵ月)までです。

ただし、下記の理由にあてはまる場合は育休期間を延長し、1歳6ヵ月か2歳まで支給されます。

◎保育園の確保ができない
◎配偶者が死亡、病気、その他の理由で育児が困難
◎離婚で配偶者が子と同居しなくなった
◎6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に次の子を出産する予定、もしくは産後8週間を経過していない

(出典:ハローワークインターネットサービス『育児休業給付とは』

既婚子ども有り男性の3割は「イクメン」志向ですが経済的課題があります

昨今、「イクメン」という言葉が生まれ、男性の育児参加が奨励されています。

また、育児休業をとる男性も出ていますが、それでも残念なことに、男性の取得率はたった3.61%、しかも取得日数は5日未満にとどまっています。

ただし、内閣府の「平成27年度少子化社会に関する国際意識調査報告書」の調査によると、子どものいる男性のうち30%は、「1ヵ月以上の育休を取りたかった」と答えています。

男性が育休を積極的に取れない背景には、社会や職場の無理解の他に、経済的な問題があると考えられます。

また、厚生労働省の調査では、フルタイムで働く女性の平均賃金(2016年)は月額24万4600円で過去最高となったものの、男性と比較するとわずか73%にとどまります。

欧州に比べると男女の賃金格差が大きい日本では、家庭でメインの収入源となる男性が育児休業をとることで、経済的に苦しくなることが懸念されます。

(出典:内閣府『少子化社会に関する国際意識調査報告書』

育児休業給付金の裏ワザをご紹介!夫婦で育休すると給付金が多くなる!?

ただ、夫婦で育児休業と休業給付金の制度をうまく活用することで、より多くの給付を受けることができる場合があります。

育児休業給付金では、男性の育休取得を奨励するため、両親ともに育児休業をする場合の特例(パパ・ママ育休プラス)という制度が設けられているのをご存知でしょうか。

この制度を利用すると、育児休業の取得期間が1歳2ヵ月まで延長されます。子どもが1歳になるまで母親が育休を取得し、その後父親が2ヵ月間取得するという取り方も可能ですし、両親の取得期間が重複することも可能です。
ただし、以下の条件があります。

◎ 育児休業を取得しようとする人の配偶者が、子の 1 歳に達する日
(1 歳の誕生日の前日)までに育児休業をしている
◎本人の育児休業開始予定日が、子の 1 歳の誕生日以前であること
◎本人の育児休業開始予定日が、配偶者が取得している育児休業の初日以降であること

母親のほうが父親よりも給与が低い場合、この制度を利用して半年ずつ育児休業を取得した方が、給付金が増えるケースがあります。
例としては、以下のようなケースです。

例1:母親:月給180,000円(産後休業のあと10ヵ月間の育休を取得)
180,000円×0.67×6ヵ月(72万3600円)+180,000円×0.5×4ヵ月(36万円)=1,08万3,600

例2:母親:月給180,000円、父親:月給250,000円
(両親が6ヵ月ずつ12ヵ月の育休を取得した場合)
180,000円×0.67×6ヵ月(72万3600円)+250,000円×0.67×6ヵ月(100万5,000円)=172万8,600円

両親の月給が異なることに加えて、上で説明したように、6ヵ月以降は給付額が休業前の50%まで減額されてしまうので、両親が6ヵ月ずつ12ヵ月の育休をとったほうが支給額も多くなるのです。

育児休業中は社会保険料が免除されます!

育児休業中は、男女ともに社会保険料が免除されるため、こちらの申請も忘れてはいけません。対象となるのは以下に当てはまる人です。

(ア)1歳に満たない子を養育するための育児休業
(イ)1歳から1歳6ヵ月に達するまでの子を養育するための育児休業
(ウ)1歳6ヵ月から2歳に達するまでの子を養育するための育児休業
(エ)1歳(上記(イ)の場合は1歳6ヵ月、上記(ウ)の場合は2歳)から3歳に達するまでの子を養育するための育児休業の制度に準ずる措置による休業

また、免除される期間は、育児休業の開始月から終了予定日の翌日の月の前月(育児休業終了日が月末最終日の場合は育児休業終了月)までとなっています。

なお、産前産後休業保険料免除制度や育児休業保険料免除制度によって保険料が免除されている期間については、将来年金を受け取る場合に社会保険の被保険者期間として取り扱われるので、年金額が減額される心配はありません。

免除制度を申請するだけで、保険料を納めずとも社会保険のメリットは受けられ、将来の年金額にも響かないのですから、申請しない手はないでしょう。

申請する場合は、「健康保険・厚生年金保険育児休業等取得者申出書」を作成し、職場を通じて提出します。

(出典:日本年金機構『育児休業保険料免除制度』

育児休業制度をうまく活用して、子育てをしましょうね

子どもは宝物です。
しかし、昨今は経済的な問題で子どもを諦めてしまうケースや、育児のために両親のどちらかが仕事を辞めざる得ないケースもあります。

今回ご紹介した制度は、働きながら子育てをする人を経済的に応援するための制度です。

雇用保険に入っている人なら給付金を受け取る権利があるので、こうした制度をうまく活用していきましょう。

労務・社会保険関係

【労災】業務中の病気や怪我で、障害が残ったときにとるべき手続きを分かりやすく説明します

さて、労働者が業務上のけがや病気となり、治療を受けたにもかかわらず障害が残った場合、労災保険から障害給付を受けることができます。
今回は、障害を抱える人やその家族を支える障害給付を受け取るための手続きについて説明します。

障害の等級に応じて得られる3つの給付

障害給付は、以下の3つの給付が障害の等級に応じて年金もしくは一時金形式で支給されます。

○障害補償年金、一時金
○障害特別支給金
○障害特別年金、一時金

第1級から第7級の重い障害に対しては障害補償年金が、第8級から第14級までの比較的軽
い障害には、障害補償一時金が支給されます。
年金は年6回に分けて障害を負っている期間中に支給され、一時金は1回のみの支給となり
ます。

障害補償の対象となる障害の程度と給付内容は、障害等級表に定められています。

障害補償年金

第1級:給付基礎日額の313日分
第2級:同277日分
第3級:同245日分
第4級:同213日分
第5級:同184日分
第6級:同156日分
第7級:同131日分

障害補償一時金

第8級:給付基礎日額の503日分
第9級:同391日分
第10級:同302日分
第11級:同223日分
第12級:同156日分
第13級:同101日分
第14級:同56日分

(出典:厚生労働省『「障害(補償)給付の請求手続」障害等級表』

給付基礎日額の計算方法について

障害補償年金、一時金の支給額は、「給付基礎日額」をもとに算出します。

労働基準法の平均賃金にあたるもので、仕事中や通勤中の事故(労災)が発生した日、もしくはうつ病など医師の診断によって疾病の発生が確定した日の直近3ヶ月間に支払われた給料の総額を暦日数で割った1日あたりの賃金額を言います。

なお、以下の賃金と期間は除外します。

賃金総額から控除されるもの

・臨時に支払われた賃金(ボーナスなど)
・3ヶ月を超える期間ごとに支払われた賃金
・通貨以外のもので支払われる賃金で一定の範囲に属しないもの

総日数から控除するもの

・業務上の負傷、疾病による療養のために休業した期間
・産前産後の休暇(女性の場合)
・使用者側の自由による休業期間
・育児休業期間、介護休業期間
・試用期間
(出典:厚生労働省『「障害(補償)給付の請求手続」障害等級表』

障害特別年金、障害特別一時金

ボーナスなどの特別給与に関しては、障害特別年金、障害特別一時金として支給されます。算定の根拠となるのは「算定基礎日額」で、仕事中や通勤中の事故(労災)が発生した日、または、うつ病など医師の診断によって疾病の発生が確定した日以前の1年間に勤務先から受取った特別給与(ボーナス)などの総額を算定基礎日額とし、365で割った金額になります。

支給額はそれぞれ以下の通りです。

障害特別年金

第1級:給付基礎日額の313日分
第2級:同277日分
第3級:同245日分
第4級:同213日分
第5級:同184日分
第6級:同156日分
第7級:同131日分

障害特別一時金

第8級:給付基礎日額の503日分
第9級:同391日分
第10級:同302日分
第11級:同223日分
第12級:同156日分
第13級:同101日分
第14級:同56日分
(出典:厚生労働省『「障害(補償)給付の請求手続」障害等級表』

障害特別支給金

障害特別支給金として、障害等級に応じた金額を一時金として受け取ることもできます。

一時金の支給額は以下の通りです。
第1級:342万円
第2級:320万円
第3級:300万円
第4級:264万円
第5級:225万円
第6級:192万円
第7級:159万円
第8級:65万円
第9級:50万円
第10級:39万円
第11級:29万円
第12級:20万円
第13級:14万円
第14級:8万円

(出典:厚生労働省『「障害(補償)給付の請求手続」障害等級表』

一時金形式で給付を受けることもできる

障害給付の受給権者は、希望すれば一時金形式で給付を受けることもできます。
その額は、障害の程度によって異なります。
また、前払一時金を受け取ると、毎月の支給額の合計が前払一時金の額に達するまで支給が停止されます。

第1級:給付基礎日額の200日分、400日分、600日分、800日分、1000日分、1200日分、1340日分
第2級:同200日分、400日分、600日分、800日分、1000日分、1190日分
第3級:同200日分、400日分、600日分、800日分、1000日分、1050日分
第4級:同200日分、400日分、600日分、800日分、920日分
第5級:同200日分、400日分、600日分、790日分
第6級:同200日分、400日分、600日分、670日分
第7級:同200日分、400日分、560日分

(出典:厚生労働省『「障害(補償)給付の請求手続」障害等級表』

障害補償年金、障害補償一時金と、障害補償年金前払一時金の請求方法は以下の通りです。

1. 障害補償年金、障害補償一時金の場合
けがや病気が治癒した日の翌日から起算して5年以内に、「障害補償給付支給請求書」(労災則様式第10号)に医師の診断書等を添付し、労働基準監督署長に提出する
2. 障害補償年金前払一時金
原則として年金の支給請求と同時、もしくは年金の支給決定通知があった日の翌日から起算して1年を経過する日までに、「障害補償年金前払一時金請求書」を提出する

労災の後遺症認定を受けるには

また、障害補償給付(障害給付)申請の際に添付する診断書には、医師による症状の所見を記載する欄があります。

医師は忙しいので、簡単な所見や記述で済まされてしまうこともあります。
できるだけ詳しく書いてもらえるように依頼し、自覚症状などをはっきりと述べるようにしましょう。

労災保険の後遺障害認定を受けるには、診断書のほかに労働基準監督署の担当者との面接や、労災の医師(地方労災医員と呼ばれます)との面接(検査)などが複数回行われます。
この面接の結果が障害等級の決定に影響を与えることがあります。

診断の結果が不服な場合、結果を知った日の翌日から、審査請求なら3ヶ月以内、再審査請求なら2ヶ月以内に申し立てを行う必要があります。
不服申し立ては、審査請求と再審査請求の2回に限られます。

障害を受けた方の円滑な社会復帰や、家族介護を支援する制度

このほか、せき髄損傷など20の疾病となった方で、治癒後に症状が悪化した場合に、円滑な社会復帰を進めるための診察や保健指導、薬剤の支給といった「アフターケア制度」があります。

また、欠損障害や機能障害を負った方に対する義肢や車いすの購入費用の支援、障害1級を負った方で10年以上にわたって障害給付を受けていた方が亡くなった際に、遺族の方に「長期家族介護者擁護金」を支給する制度などがあります。
長期家族介護者擁護金を申請する際は、「長期家族介護者擁護金支給申請書」を労働基準監督署長に提出します。

【独立】個人事業主・起業家に役立つ話

税務署に開業届けを出して個人事業主となった場合、収入が130万円未満であれば健康保険は扶養家族のままでいられるの?

さて、ひとくちに「起業」といっても事業規模は様々です。

例えば、「夫の扶養家族になっているが、自宅で料理教室やネイルサロンを開業したい」という方もいるでしょう。
そういった方が開業届を出して事業主となった場合、引き続き扶養家族として、税金や健康保険、年金その他のメリットを受けることは可能なのでしょうか。

今回は、開業届を出して事業主になった場合の税金や健康保険などについてご紹介します。

扶養の範囲内で個人事業主として開業できます!

まず結論から言うと、「扶養の範囲内で個人事業主として開業することは可能」です。

開業届と社会保障の間に関係はありません。

なお、法人として起業した場合は、社長ひとりであっても社会保険に加入する義務があるので、扶養にはなれません。

日本の税制には「配偶者控除」や「扶養控除」という仕組みがあり、扶養する家族がいる人は年間所得から一定額が差し引かれ、税金が安くなります。

例えば、主婦が配偶者の扶養に入っている場合、年間38万円を超える所得があると、配偶者控除が受けられなくなります。

パートの主婦が夫の扶養に入れるかどうかの基準として、「年収103万円のカベ」「年収130万円のカベ」などと表現されることもあります。

まずは、この2種類を見ていきましょう。

「年収103万円のカベ」についておさらいしましょう

まず、パート主婦で言うところの「年収103万円のカベ」について。

これは、給与所得が103万円のパート主婦の場合、勤め人を対象にした65万円の給与控除を差し引くとちょうど所得は38万円になります。
そこから基礎控除の38万円を差し引けば、所得は0円と
いうことになるので所得税が発生せず、配偶者控除も受けられます。
さらに配偶者の税金も安くなり、良いことづくめです。

また、上記の配偶者控除と混同されやすい制度に「配偶者特別控除」があります。
これは、「配偶者の所得が38万円超76万円未満の場合、一定額の所得控除を受けられる」という制度です。つまり、38万円以上の収入がある場合も、76万円未満であれば、扶養家族としてみなす、ということです。

なお、2018年から配偶者控除が見直しとなり、年収103万円が150万円に引き上げられることが決まっています。
配偶者特別控除についても年収要件が201万円まで拡大されるので、より扶養内で働きやすくなると言えるでしょう。

「年収130万円のカベ」は所得ではなく収入です

次に、「年収130万円のカベ」についてです。
これは、健康保険や厚生年金といった社会保険の扶養に入るための限度額を指しています。

年収130万円を超えた場合、パート主婦であっても年金保険料を納める必要のない国民年金の第三号被保険者でいられなくなります。
この場合、個人事業主と見なされるので、自分で社会保険料を納めなくてはなりません。なお、こちらの130万円という額は所得ではなく「収入」なので、違いに注意が必要です。

配偶者の扶養に入っている人が個人事業主として開業した場合は?

ここで、配偶者の扶養に入っている人が個人事業主として開業したケースに戻ります。

パート主婦と同様に、年間38万円以上の所得があると配偶者控除が受けられなくなりますが、このとき注意しておきたいのは「パートやアルバイトなど給与所得者の“収入”」と「個人事業主の“所得”」は考え方が違うという点です。

個人事業主の“所得”とは、収入から必要経費を引いたものを指します。

1.所得税・住民税について
まず、「年収103万円のカベ」にかかわる所得税の課税ラインです。
収入から必要経費を引いたものが個人事業主の“所得”ですが、さらに確定申告で青色申告をし、一定条件をクリアすると追加で65万円が控除されます。
つまり「収入―経費―65万円=所得」となります。 この所得が38万円以下であれば、所得税は課税されません。

なお、青色申告をするには、あらかじめ税務署で手続きが必要になるほか、複式簿記による「仕訳帳」「総勘定元帳」の記帳と、貸借対照表と損益計算書の作成が必要です。

簿記の知識がない方にとっては少しハードルが高く感じるかもしれませんが、最近は会計ソフトで簡単に帳簿付けができます。

ですから、収入がある程度見込めるのであれば、チャレンジしてみてもいいでしょう。

一方、住民税については自治体によって課税基準が異なり、38万円以下でも課税されることがありますので確認が必要です。

2.社会保障について
ついで、「年収130万円のカベ」といわれる社会保険についてです。青色申告の65万円は税金に関してのものなので、社会保険での扶養には適用されません。

・健康保険について
加入している健康保険組合によって扱いが異なります。個人事業主であっても「年収130万円までであればOK」という場合や、「所得130万円までOK」という場合もありますし、中には個人事業主は全てNGという場合という場合もあるのです。

また、「年収130万円」までという条件の場合、費用は引けませんので注意しましょう。

・国民年金について 国民年金については、130万円までの収入であれば第三号被保険者として扶養の範囲に入ることができます。国民年金の扶養判定は、収入から費用を差し引くことができます。

赤字なら確定申告しなくてもいいの?

個人事業主の場合、事業所得が38万円以下であれば確定申告をしなくても良いとされています。

これは、所得から基礎控除の38万円を差し引けば、所得が0円になるためです。

ただし、赤字の場合は、翌年以降に事業が軌道に乗って収益が出せた場合に、赤字を繰り越すことができるので、翌年以降に節税するためにも確定申告しておくことをおすすめします。

なお、この場合は最長3年間赤字が全額繰り越せるため、青色申告がおすすめです。

【注意!】扶養から外れると、保険料だけで年間30万円の負担増!

ここまで、配偶者の扶養に入っている人が個人事業主として開業するケースについて見てきました。年収130万円のカベを超えてしまうと、扶養から外れて自分で社会保険料を納めなくてはならなくなります。

この場合、健康保険料と国民年金の負担だけで、年間だいたい20万~30万円もの負担が増えてしまいます。

個人事業主として開業し、この分を負担してもプラスになるほどの収益を上げられているなら気にする必要はありませんが、微妙なラインという場合は年収130万円以内に収めておくのが得策と言えるでしょう。

最後まで読んでくださって、ありがとうございました。